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好調な市場から降りずにリスクに備えるには

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ダン・ローウィー 
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
マルチアセット・ソリューション部門 共同責任者 兼 最高投資責任者
 
 
 
 
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ヴァディーム・ズロトニコフ    
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
マルチアセット・ソリューション部門 共同責任者 兼
チーフ・マーケット・ストラテジスト 兼
システマチック/インデックス戦略 最高投資責任者
 
 
 
 
 
 

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2017年8月8日

 

現在の市場における主なリスクは明らかだ。株式市場ではバリュエーションが高水準にあり、債券市場では低金利が続いている上に、信用スプレッドもタイトだ。このような状況下でも、資産配分はややリターン指向に傾けておくことが依然として理にかなっているが、投資家はリスクに備えつつリターンを確保するために、伝統的な株式・債券運用にとどまらない投資手法にも目を向けるべきであろう。
 
投資判断が簡単であることは、極めてまれだ。しかも、現在のように株式も債券も割高に見え、極限まで下がった金利がすでに一部の国ではすでに上昇し始めている中で判断を下すのは至難の業になっている。市場の水準についてコメントすることが稀な中央銀行ですら今や言及せざるを得なくなり、ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は6月下旬に資産価格のバリュエーションはやや割高であるとの認識を示した。また、政治的リスクや政策動向も予測しにくくなっている。 
 
こうした状況であるにもかかわらず、市場は概して堅調に推移しており、ボラティリティは低いままだ。投資家は、この好ましい状況が一体いつまで続くのかと、疑心暗鬼になっている。  
 

楽観論にも根拠  

広く見回せば、状況は確かに明るい。世界経済は中国と欧州の景気回復に牽引されて成長を持続している。労働市場も健全だ。長きにわたった中央銀行の金融緩和の結果、デフレ圧力も後退している。しかも、政治家は更なる財政支出による景気刺激について語っている。つまり、現在の経済環境はそう悪くない状況にあり、最近の市場の強さは理にかなっている。
 
もちろん、リスクが消えたわけではない。金利上昇は予想以上の速さで進むかもしれないし、来るべき各国の金融緩和政策の終焉は予想以上の悪影響をもたらすかもしれない。政治家が約束したほどの財政支出は実行されないかもしれない。米国の企業収益は、非常に高まった市場の期待には届かないかもしれない。
 
どのようにすればポートフォリオを望ましくないリスクにさらすことなく投資機会を捉えることが出来るのだろうか?鍵となるのは、規律正しい投資手法を持つことだ。どこで投資機会が生まれようとも、それを追求できる十分な広範さを持ち、状況の変化に応じて迅速に対応できるダイナミックな投資手法だ。例えば、以下の3つのような方法が実行可能だ(図表)。
 
 
 
 
 
リスクを限定しつつ投資機会を見出す.png
 
 
 
 

1) 投資対象の拡大

2010年代に入ってからこれまでは、株式と債券を組み合わせた単純なパッシブ運用で、十分なパフォーマンスを上げることが出来たかもしれない。しかし、この手法の先行きはそう明るくない。典型的な株式6割、債券4割のポートフォリオの今後10年間の期待リターンは4.5%と今までになく低く、多くの投資家の予想を大幅に下回る水準だ。
 
これを上回る結果を望むのであれば、創造的に考える必要がある。例えば、ロング・ショート戦略の活用も一つの手段かもしれない。この戦略は、投資家の行動バイアスから生じる、単一市場内における価格の歪みに着目することでリターン獲得機会を捉えようとするものだ。
 
このようなオルタナティブ投資戦略を組み入れることは、広範な投資機会を取り込むことになるため、ポートフォリオのエクスポージャーをより分散させるという点で重要である。こうした戦略は、株式に対しても、債券に対しても相関度が低いものであることが理想的だ。
 
パッシブ運用に、より尖った高確信度のアクティブ運用を組み合わせることも一助となるだろう。それぞれの収益源泉の相関度はそれほど高くないので、さまざまな市場環境をうまく乗り切るのにより適したポートフォリオの構築が可能になる。
 
また、ポートフォリオがインフレ率上昇の恩恵を受ける方向に傾けておくことも望ましいだろう。リフレ傾向に敏感な戦略(不動産投資や大幅に割安な「ディープ・バリュー」株式など)のバリュエーションは魅力的な水準にあり、リターンの底上げが期待出来る。
 

2) 意図せざるリスクの集中に警戒

これは、幅広い資産クラスにわたり戦略的資産配分と戦術的な資産配分が混合するマルチアセット戦略において特に重要なことだ。なぜなら、いくら多角的に分散投資されたポートフォリオであっても、意図せずに共通のリスクが集中してしまう可能性があるからだ。リスクの集中を避けることで、どのような投資機会を捉えるべきかを決めるのに役立つはずだ。
 
近年、投資家は制御不能なインフレよりも、デフレを懸念してきた。それはそれで正しかった。人口動態的な問題、生産性の低迷、テクノロジーの進化がもたらす影響などといった要因が物価の上昇を抑制してきたからだ。
 
ここで問題なのは、これらの懸念に影響されて多くの投資家が同じ方向のポジションを取ってしまっていることだ。一部の高格付債券、不動産投資信託(REIT)、低ボラティリティ株式、高配当利回り株式などに多くの投資家が無意識のうちに引き寄せられてきた。一方で、彼らはコモディディ、景気敏感セクターの株式、インフレ連動債、ディープ・バリュー株式などから距離を置いてしまった。
 
その結果、多くの投資家が、多岐にわたる資産クラスに分散投資していながらもリスクが十分に分散されていないポートフォリオを抱えており、もし成長が加速し金利が上昇した場合には苦戦する可能性がある。この保守的な資産配分に基づくポートフォリオは、全体として金利とマイナスの相関関係にあり、リフレ経済環境の下では良いリターンを実現できない可能性がある。より統合的な観点から運用されたマルチアセット戦略であれば、このような共通のリスクの特定と分散に一役買ってくれるだろう。
 

3) 長期的な展望を持ちつつ、臨機応変に

日々変化する市場環境は新たな投資機会やリスクをもたらす。したがって、これに素早く対応できる柔軟性を持ち合わせていることも重要である。昨今、政治が資産価格を左右する大きな要因になっているが、政治は予測不能なことが多い。市場環境に応じてポートフォリオを変化させることができる運用プロセスが重要だ。
 
しかし、そのような柔軟な対応をするためには、まず市場の長期的な方向を予測するための、多角的な観点に基づく強固なリスク管理の枠組みが必要になる。なぜなら、どのようなリスクが存在するかを把握するのは比較的容易だが、それがいつ現実化し、それに対しどう反応すべきかを知ることのほうが重要だからだ。今、我々は株式や債券の高バリュエーション、金利上昇の可能性、政治的不透明性といったリスクについて語っているが、それらは半年前にもリスクとして広く議論されていた。しかし、もしその時ポジションを手仕舞っていたら高い代償を払うことになっていただろう。
 
アナリストは予想を立てることに長い時間をかけるものだが、短・中期的に市場を動かすのは、予想されていなかった「サプライズ」だ。企業収益も業績見通しも歴史的高水準にある現状において「サプライズ」があるとしたら、それがプラス方向である可能性は低い。
 
また、現在の市場は戦後一度も経験したことのない状況にある。未曾有の金融緩和政策が徐々に解除されていく時に一体どのようなことが起きるのか、誰にも分からない。各国中央銀行が金融危機時に購入した資産を売り出した時、市場はどう反応するだろうか?投資家が頼れる航海図はそこには無いのだ。
 
未知の領域に船出しなければいけないということは、これからのリスク管理は従来の単純な相関関係の分析を超えたものでなければならず、予期不能な事態に備えてポートフォリオにストレス・テストを行う必要があるということを意味する。収益が期待に満たなかったらどうなるだろうか?価格競争力を回復できなかったら?賃金が上昇したら?世界貿易が減速したらどうなるだろうか?
 
いつ行動すべきかを知るには、懸念し続けてきたリスクが現実化するきっかけを作る要因が何かを見極める必要がある。これは大変難しい。分散投資は長年の試練を経て確立された一つの手法だが、それだけでは不十分だ。
 
ABは、将来のリスクに備える上で、アクティブ運用が重要な役割を担うと考えている。それも、ファンダメンタルズ分析と計量分析を融合させた運用手法が必要である。
 
リスクは常に存在する。しかし、柔軟性とバランスを持ち合わせたポートフォリオを構築し、しっかりと投資機会を捉えていれば、次に何が生じようとも、より適切に対応することが出来るであろう。
 
 
 
 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

https://blog.abglobal.com/post/en/2017/07/sizing-up-markets-and-your-investment-strategy

 

 

 

 

 

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当資料は、2017年7月19日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 

 

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