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表面的なボラティリティ低下に惑わされてはいけない

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マーティン・アトキン
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
マネージング・ディレクター-マルチアセット・ソリューション・グループ
投資ディレクター-ダイナミック・アセット・アロケーション
全米マネージング・ディレクター-富裕層向けサービス
 

 

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2017年6月28日

 
 
 
最近の株式市場の変動率(ボラティリティ)は稀に見る低さだ。投資家は安心しきっているのだろうか?いや、そうではないだろう。むしろ、一部のリスク指標は市場心理が見た目ほど穏やかではない事を示唆している。
 
株価バリュエーションが高くなっていること、金利上昇、政治的不透明感など、足元の市場は懸念材料に事欠かない。しかし、それで投資家が慌てている様子でもない。
 
S&P500指数の3カ月ローリング・リターンに基づいてボラティリティを見てみると、現在の米国株式市場における実績ベースのボラティリティは非常に低い。今の水準より低かった期間は、過去25年間で僅か9回に限られている。
 
また、投資家の予想も落ち着いている。S&P500指数のオプション価格を基に算出され、「恐怖指数」と呼ばれることもあるVIX指数も、史上最低に近い水準にある。グローバル株式市場においても、実績ボラティリティや、オプション価格に反映された予想ボラティリティは、米国株式市場ほどではないものの下落している。
 

市場環境の変化

これは一体どういう事なのだろう?市場参加者は現実を無視しているのだろうか?
 
そうではないだろう。市場の現実が我々の目の前で変化を遂げているのだ。マクロ経済環境も政策も、グローバルな規模で変化し、投資家が重視している要因も変化している。それを端的に示しているのが米国株式市場だ。
 
世界金融危機の後しばらく、投資家はマクロ経済や地政学上のリスクに囚われていた。各国の中央銀行はデフレ脱却のために金融緩和政策を維持するだろうか?過度な金融緩和はインフレを誘発してしまうだろうか?欧州単一通貨ユーロは存続するだろうか?こうした疑問に関するその時々の市場の空気次第で、投資家は一斉に売りに走ったり、あわてて買い戻したりしていた。そのため、S&P500指数の構成銘柄は、上昇、下落局面を問わず、連動して上下することが多かった。
 
しかし、現在は状況が異なる。世界経済は回復し、通貨ユーロも存続している。市場は中央銀行の金融政策のみを投資判断の拠り所にすることを止めている。個人投資家の関心は個別企業のファンダメンタルズや固有要因にシフトした。その結果、個別銘柄間の相関度は低下し、市場全体のボラティリティも低下した 。
 

ボラティリティの急上昇

ファンダメンタルズをより重視しているとはいえ、市場は安穏に構えている訳ではなく、何らかの障害を察知した場合には直ぐにリスク回避に移る姿勢を維持している。
 
フランス大統領選挙の際にも、投資家は危険を察知すると素早く反応した。VIX指数は第1回投票前に急上昇した。そして第2回投票で欧州連合(EU)を支持するエマニュエル・マクロン氏が次期大統領に選出されると、元の平穏な状態に戻った(図表) 。
 
 
 
 
ボラティリティの水準ではなく差に注目.png
 
 
 
また、5月半ばには、米司法省が2016年の米大統領選挙時のトランプ陣営とロシアとの癒着を巡る疑惑で捜査を指揮する特別検察官にロバート・モラー元連邦捜査局(FBI)長官を任命したとの報道を受けて、VIX指数は1日の動きとしては昨年9月以来最大となる上昇を見せた。捜査の進展によってはトランプ大統領の経済政策が頓挫するのではとの懸念が広がったため、市場の焦点は金融危機後当時のように市場全体の下落リスクにシフトした。
 

市場の不安心理は意外に強い

このように市場が投資家心理とファンダメンタルズの間を行ったり来たりする環境下で、いたずらに振り回されないようにするには、どうすべきだろうか?
 
一つには、異なるボラティリティ指標を複合的に見ることではなかろうか。全てのボラティリティ指標が同じシグナルを発しているわけではないからだ。下の図表から分かる通り、実績ボラティリティと予想ボラティリティの差は現在、過去10年間の平均値より高い水準にある。これは、市場の下落に備えてオプションを購入したいと考える投資家が数多くいることを意味する。つまり、現在の市場心理はVIX指数が示唆するほど平穏ではないということだ 。
 
このようなボラティリティ・スプレッドの変化は、逆張りを好む投資家にとって有用なシグナルになり得るだろう。スプレッドの拡大は市場がより神経質になっている証拠だからだ。神経質な市場では大勢の投資家が過剰反応を示し、相場の下落に備えて割高な価格でオプションを購入する。そのような局面は、リスクを取って株式へのエクスポージャーを拡大する好機である可能性がある。
 
反対にスプレッドが縮小した場合は、エクスポージャーを減らすべきだという警告シグナルである可能性がある。穏やかな持ち合い相場が必ずしもリスクを増やす好機だとは限らない。
 

リスクの先を見据える

もちろん、ボラティリティを見ているだけでは不十分だ。株価モメンタムや金融環境といった他の様々な要因にも目を向けて、市場リスクの全体像を把握するべきだ。
 
投資リターンの見通しも重要だ。最近はリターンが低下傾向にあるが、その一因としては、米国を始めとする世界の株式市場で株価バリュエーションに割高感が出ていることや、世界的にインフレ圧力が高まっている事が挙げられる。
 
ボラティリティを適切に管理し、リスクを十分に勘案したポートフォリオを構築するのは複雑な作業を要する。リスクに対する視野を広げ、また足元のリスクの先を見据えることで、投資家は成功に近づくであろう。
 
 
 
 

 
 

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当資料は、2017年5月24日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 

 

 

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