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リスクオンとリスクオフの時代は終焉か?

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マーティン・アトキン
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
マネージング・ディレクター-マルチアセット・ソリューション・グループ
投資ディレクター-ダイナミック・アセット・アロケーション
全米マネージング・ディレクター-富裕層向けサービス
 

 

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2017年3月17日

 
 
 
米大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利や英国の欧州連合(EU)離脱決定など、2016年は多くの大きなサプライズが市場を揺るがした。だが、数々のサプライズの中でも、現在のポートフォリオのパフォーマンスやリスク管理に最も重要な意味を持つのは、そうした出来事に対して市場が示した反応そのものかもしれない。
 
市場の反応を一言で説明するには、こう言えばいいかもしれない。日本のマイナス金利政策を市場が消化するには3カ月かかり、英国のEU離脱決定のショックを乗り越えるには3週間かかったが、米大統領選でのトランプ氏の勝利は約3時間で消化された(図表1)。
 
 
新時代の到来?リスクへの反応がますます短期化.png
 
 
いずれのケースにおいても、世界の株式市場や他のリスク資産は最初こそ売り込まれたが、その後すぐに回復した。これはV字型回復と呼ばれるパターンで、各市場の推移を示すグラフを見れば一目瞭然だ。
 
このようにリスク資産が同じ方向に動く一方で国債などの安全資産が逆方向に動く連動性の非常に高い相場は、今に始まった現象ではない。投資家なら誰でも知っているように、2008-2009年の世界金融危機以降、世界の金融市場では「リスクオン」と「リスクオフ」が繰り返されてきた。
 
投資家にとって、市場のリスク選好度の急激な変化に遅れずについて行くことはなかなか困難である。例えば、リスク回避指向が急激に高まった場合、投資家は株式を売却しようとするだろう。しかし、そのタイミングをうまくつかむのは難しい。株式の売却を始めた途端に株価が回復し始めることもしばしばであろう。当然ながら、市場回復局面で買いを入れるタイミングが遅れれば、ポートフォリオのリターンに悪影響を与えることになる。
 

新たなプレーブックが必要に

だが、ここへ来てこうしたリスクオンとリスクオフのパターンが崩れ始めているとすればどうだろうか? リスクオフの期間は間違いなく短くなってきているように見えるではないか。
 
その理由は次のように説明できるかもしれない。まず、世界の経済成長にようやく勢いが付き始めており、これは株式やハイイールド債などの景気に敏感なリスク資産にとって好ましい状況である。同時に、先進国は金融政策のみで景気を下支えしてきた状況から抜け出しつつある。日本は超低金利政策を財政刺激策で補完しており、米国も近いうちに同じ行動をとる可能性がある。そうした政策が奏功した結果、リスクオンとリスクオフを繰り返すパターンが崩れ、より持続的なトレンドが形成されている可能性がある。
 
そうであれば、投資家にとって、2017年はどのような年になるのだろうか?
 
まず、リスクとリターンに関する考え方が変わることになる。投資家は市場のどのシグナルがその時点の状況を最も正確に反映しているか見極めるため、より幅広く市場のシグナルを探るようになるだろう。
 
例えば、株価モメンタムやボラティリティなどが株式市場を左右する要因として再び重要性を増す可能性がある。リスクオンとリスクオフを繰り返すパターンが多かった時期には、これらのファクターはそれほど重要視されてこなかった。しかも、誤って解釈される場面も多かった。しかし、そうした状況は変化しつつあるようだ。
 
そして、それらのシグナルを注意深く吟味することも大いに役立つ。図表2が示すように、現在は株式市場の実績ボラティリティは異例なほど低水準にある。しかし、それは必ずしも平穏な時期が長く続いていることを意味するわけではない。オプション市場の価格から算出されるインプライド・ボラティリティと、株式市場の実績ボラティリティの差などの指標は、投資家の不安が突然高まり易い状況であることを物語っている。
 
リスク指標が異なれば示唆される状況も変化.png
 
 

分散投資を忘れずに

そうした分析方法の見直しに加えて、投資家はポートフォリオを十分に分散し、相対的に魅力度の高い資産クラスに機動的に投資をシフトする「レラティブ・バリュー」取引をうまく活用することも考えるべきであろう。
 
世界的にデフレ脱却ないしインフレ率の上昇が進み、経済成長のペースも緩やかに加速するならば、投資家は幅広い資産クラスや地域の中から、物価上昇による恩恵を最も大きく受けられる市場に速やかに資金をシフトしたいと考えるのが当然だろう。そうした市場としては、コモディティや通貨、あるいは一部の新興国市場が挙げられるかもしれない。
 
包括的なマルチアセット戦略を用いれば、投資家はすぐにそうした投資機会を活用することができる。ポートフォリオを構成する各資産クラスが関連性なく分かれたままで、それぞれの狭い視野のみから投資判断を行っていると、そうした魅力的な投資機会を捉えることは難しい。
 

なぜ自動操縦ではいけないのか

それ以外にも留意しておくべきことがある。市場が新たな局面に入り、各資産クラスが中央銀行の政策よりもファンダメンタルズに沿って取引されるようになると、投資対象の状況変化に機敏に対応するアプローチが不可欠となるだろう。
 
リスクオンとリスクオフを繰り返す局面が終わり、持続的なトレンドが形成され始めると、投資家は流れに乗ってさえいれば、ポートフォリオ管理を自動操縦に変えたいという誘惑に駆られるかもしれない。だが、それはリスクの大きなアプローチだ。市場にトレンドが形成されている場面でも、投資家を失望させるイベントが起きたり市場が大量の売りに見舞われたりする可能性は排除できない。
 
2017年も現在の成長トレンドや政策見通しを覆す新たなサプライズが起きる可能性がある。投資家は依然として数多くの不透明要因に直面している。英国はEU離脱交渉を順調に進めることができるのだろうか? トランプ米大統領はどんな政策を優先し、どの政策について議会の承認を得ることができるのだろうか? フランスとドイツの有権者は今年行われる選挙で反エスタブリッシュメントを掲げる人物を指導者に選ぶのだろうか? 資産配分を迅速に調整する能力が成功のカギを握ることになる。
 
習慣を打ち破るのは難しい。私たちは皆、2017年を迎えるにあたり、過去5年間の市場の動向、すなわちリスクオンとリスクオフの繰り返しというパターンに基づき今後の市場の反応について様々な考えを巡らせてきた。しかし、過去のパターンはもはや通用しないかもしれない。その結果、リスクやリターンについて幅広いアプローチを活用し、それを柔軟に組み合わせることができる投資戦略が必要となる。今、市場が転換点にあるとすれば、投資家にはそれに適応できるポートフォリオが必要となる。
 
市場で唯一不変の法則は、市場は常に変わり続けるということなのだ。
 
 
 

 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

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当資料は、2017年1月30日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

 
 

 

 

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