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2017年の新興国市場は自律的回復が可能か?

Morgan Harting
モーガン・ハーティング
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
マルチアセット・ソリューション部門
ポートフォリオ・マネジャー
 
 

 

 
 
 

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2017年1月26日

 

昨年、新興国市場ではようやく回復が始まったところであったが、米大統領選でのトランプ氏勝利を受け、先行きに不安が生じている。こうした懸念は無視できないが、それでも新興国には投資すべき理由は十分にあると考えている。
 
新興国市場は10カ月にわたり力強く上昇してきたが、その後は投資家心理が冷え込んだ。米大統領選以降、米国の金利上昇や米ドル高が新興国の経済や企業を脅かしているからだ。保護主義的政策を掲げるトランプ氏の公約は、メキシコから中国に至る多くの国々を警戒させている。しかも英国の欧州連合(EU)離脱問題や最近行われたイタリアの国民投票など、ポピュリスト的な潮流の拡大により、過去何十年にもわたって新興国に恩恵をもたらしてきたグローバル化の流れが反転しかねない兆しが世界中で広がっている。
 
ここで、リスクについて少し広い視点から考えてみよう。地政学的秩序の変化は、米国の動向が新興国に及ぼす影響力を低下させる可能性がある。また、新興国における好ましい国内経済動向は、米国の政策によって生じかねない打撃を和らげ得る。したがって、米国がもたらす不確実性の影響を比較的受けにくい新興国では、依然として魅力的な投資機会を見出すことができると言えよう。
 

新たな地政学的秩序?

地政学的秩序の重心は、主要新興国にシフトしつつある。アジア地域では中国の影響力が増している。また、ウクライナ、ハンガリー、ブルガリア、そして旧ソビエト連邦構成国や中央アジアに対するロシアの影響力も再び高まっており、西側諸国による対ロシア制裁の効果を減じる要因となっている。
 
国際通貨基金(IMF)や世界銀行は、もはや新興国に緊急融資を行う唯一の存在ではなくなっている。地域紛争の解決に向けた国際機関の機能は低下している。つまり、新興国では経済成長や緊急時の支援といった面で、外部に対する依存度が下がってきている。
 
新興国は経済的な独立も進んでいる。多くの新興国において経済成長の回復を牽引しているのは国内のトレンドであって、米国ではない。例えば、ロシアとブラジルは景気後退から抜け出し、回復に向かっている。また、成長が加速している新興国が増えているため、中国の景気減速による悪影響もある程度緩和されるとABでは見ている。
 
ブラジルなど多くの新興国では、インフレがおおむね抑制されている。ベネズエラなど状況が悪化している国もあるが、それは例外的な存在だ。また、新興国の多くでは実質金利が景気を刺激する上で十分低い水準にある。
 
対外収支も大幅に改善されてきた。その結果、新興国は概して海外資本への依存度が低下しており、先進国の金利上昇による悪影響を受けにくくなっている。
 
したがって、足元の米ドル高に対する懸念は行き過ぎかもしれない。むしろ、輸出主導型経済である多くの新興国にとって、米ドルに対する自国通貨の下落は海外市場での製品やサービスの競争力を高めることから、収益性を支えるという面もある。
 

投資機会はどこに?

このようにマクロ経済に関するリスクを切り分けてみれば、さまざまな投資機会を発掘することができる。例えば、株式投資家は国内経済の成長の恩恵を受ける高成長企業に注目することができる。今日、世界で最も収益力が高く、安定した成長を遂げているテクノロジー企業の一部は中国にあり、そうした企業は急増する中間所得層の支出をテコに収益を拡大させている。
 
世界の投資家から長年にわたって見過ごされてきた、バリュエーションが割安な銘柄も注目に値する。例えば、生産コストの低さや国内および世界の経済成長の回復が追い風となりそうなロシアの資源関連銘柄だ。韓国の金融機関も、資産の質の改善や一段とスティープ化したイールド・カーブを考えれば、そのバリュエーションは極めて魅力的であるように見える。
 
バリュエーションの評価をする際に、財務および収益の質や安定性を考慮することも効果的だ。例えば、強力なブランド力を持ち、中間所得層から強く支持されている生活必需品企業などがそれに当てはまる。
 
新興国株式のバリュエーションは先進国に比べ依然として割安である(図表1)。主要先進国を襲った政治的混乱を踏まえれば、今はむしろ「政治リスク」がすでに株価に織り込まれ、割安な水準にある新興国株式を見直すべき時期かもしれない。
 
 
新興国株式は依然として先進国株式に対し割安.png
 
 
 

中南米の財政健全化

政治改革は債券市場にも影響を与えている。アルゼンチンやブラジルなどで汚職の摘発が進んでいる中南米について見てみよう。これらの国々では、コモディティ・ブームに沸いていた時代に無節操な支出や汚職が拡大したが、現在は政府が企業活動に配慮しながら持続可能な財政政策を進めており、それが成長にも寄与している。しかも、一部の国ではインフレが一段と抑制されており、多くの中南米諸国の米ドル建て債は投資妙味が高まっている(図表2)。
 
 
 
米ドル建て新興国債券のバリュエーションは魅力的.png
 
 
もちろん、新興国市場は数多くの課題に直面している。そして、米国の政策変更が新興国に与える影響が判明するのには時間がかかるであろう。
 
こうした不透明感を踏まえれば、現在新興国投資を考えている投資家にとっては、株式や債券を始めとする幅広い資産クラスを視野に入れた柔軟なアプローチが効果的かもしれない。市場環境の変動に対して耐久力のある新興国ポートフォリオを構築する上でカギとなるのは、個別銘柄ベースで厳選した株式、債券、通貨を組み合わせることであるとABでは考えている。ABではまた、考慮すべき重要な課題も数多くあるもの、リスクを的確に把握すれば(以前の記事『Getting a Grip on Emerging-Market Risks』(英語)参照)、一見困難な時期であっても新興国への投資を続ける確信は得られると考えている。
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

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当資料は、2017年1月3日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 

 

 

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