2017年

女子プロゴルファーが真にプレーに集中するために

2017.7.31

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プロゴルフは、一打の差で明暗が分かれる過酷なスポーツだ。
一生分のお金を稼ぐ選手はごくわずかで、引退後も働き続ける選手は少なくない。
女子プロゴルファーのキャリアサポートとお金とのかかわり方をテーマに、 日本女子プロゴルフ協会会長の小林浩美氏と弊社代表取締役社長の山本誠一郎が語り合った。

93年に米ツアー初優勝。世界で戦えたことが自信に

山本私は小林会長と生まれが一カ月違いです。また当社は、アクサグループの一員で、私はアクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKIの前夜祭にも5年連続で参加させていただいていることもあり、小林会長には勝手に親近感を感じております。いまでは日本女子プロゴルフ界のリーダー的存在になられた小林会長ですが、そもそもゴルフとの出会いはいつ頃だったのでしょうか。

小林シングルハンディの父親から「プロゴルファーを目指さないか」と、高校3年生の時に勧められたことがきっかけです。当時は中学、高校とソフトボールの部活動に明け暮れ、将来は、体育教師になれればいいと漠然と考えていました。しかし、大学受験に失敗し、父がまた、「人に教えられるくらい上手になればいい」、「大学より手に職をつけた方がいい」という考えだったので、資格を取る感じで始めました。そこで父の知り合いの男子プロの指導を受けるため、茨城県のゴルフ場の研修生となり、ゴルフ人生をスタートしました。いまは低年齢化していますが、当時は18歳から始めるのは普通でした。

山本1984年にプロテストをトップで合格され、翌年にデビュー。1990年からはアメリカツアーに参戦されましたね。

小林プロ入り5年目で初優勝して年間6勝を挙げて、賞金ランキングは2位となりました。その年、アメリカツアーのプロテストも受験してトップ合格し、翌年1990年から米ツアーに参戦しました。やはり世界で一番強いツアーは米国です。そこで優勝したいと思いました。初優勝は1993年のJAL・ビッグ・アップル・クラシック。13年間戦った中で、米国で4勝、欧州ツアーでも1勝を挙げ、日米欧の3ツアーで勝てたことで、自分のゴルフが世界で通用したという大きな自信になりました。

山本私は、1993年から2001年までニューヨークに駐在しており、あの大会の3日目を現地で観戦していました。その時に購入した大会のポスターは、いまでも自宅に飾ってあります。

小林本当ですか! ありがとうございます。

中期経営計画で組織を強化「世界で勝つため」の環境を整備

山本欧米ツアー5勝を含むプロ通算15勝という輝かしい実績を残され、2011年2月に日本女子プロゴルフ協会の第6代会長に就任されました。日本女子プロゴルフ界は、若手選手の台頭や実力のある海外選手の参戦などにより、高い人気を誇っています。2017年はツアーの賞金総額も過去最高です。ツアーを盛り上げる秘訣はどこにあるのでしょうか。

小林大きく分けて3つに注力しています。1つは、トーナメントを開催してくださる大会スポンサー対応。試合前に必ずあるプロアマ大会でのお客様に対するホスピタリティです。スポンサーの大切なお客様は、その日女子プロとのプレーを大変楽しみにしていらっしゃいます。その時、ご一緒する女子プロのホスピタリティがとても大事です。毎年新人が入り、シード選手の入れ替え等がありますので、その都度ホスピタリティの重要性を説き、新人セミナーでは約14項目にわたる講義を時代の変化に合わせて改変しています。
2つ目は、ゴルフファン。全国で応援して下さるファンの方々に選手はサイン等でファンサービスに励んでいます。また、プロスポーツなので強くなければいけません。私たちは2013年から「ツアー強化」を掲げ、4日間競技の推奨や練習場環境強化など「世界で勝つため」の環境整備を図っています。
3つ目は、協会の組織力強化です。2013年に協会が一般社団法人へ移行したことを機に、組織の強化に取り組みました。いつ同業他社が出てくるかわからない環境変化のなかで、唯一無二の女子プロゴルフ団体として存在する必要があるからです。それで初めて中期経営計画「LPGAビジョン2016」を作り、協会や女子ゴルフの認知度も調査しました。
また、トーナメント事業部、ゴルフ事業部、管理事業部の3事業部がそれぞれ重要テーマを掲げ、仕事の効率化と収益の改善を図っています。さらに今年は機能別組織に改編し、新たな「LPGA2019年ビジョン」では、プロスポーツビジネスとしての基盤構築を掲げています。特にプロスポーツ団体の根幹である権利ビジネスが重点テーマです。

山本:ビジョンだけではなく、計数目標も立てられるわけですか?

小林そのとおりです。数字を設定することで目標と達成年度が明確になりました。また私たちは常にスコアという数字の世界で生きていますので、計数目標はあまり苦にはなりません。初めて中期計画を回すにあたり、2013年からコンサルタント会社富士ゼロックス総合教育研究所にご協力いただき、業務を継続的に改善するPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを繰り返して協会運営にあたっています。アメリカのPGAやLPGAのツアーの仕組みも参考にしており、アメリカでプレーしたことが大いに役立っています。

小林浩美(こばやし・ひろみ)

高校卒業後ゴルフを始め、3年後の84年にトップ合格して翌年プロ入り。初優勝した89年に年間6勝をマークし、90年から米国ツアーに参戦した。プロ通算15勝(米ツアー4勝、欧州ツアー1勝、日本ツアー10勝)。2008年に日本女子プロゴルフ協会理事に就任、11年より同会会長を務める。

「資産運用の能力は 失敗と成功を繰り返して養われる」(小林)

〝ゴールデンリタイアメント〞な米男子ゴルフの年金制度

山本アメリカのプロゴルフ界は、年金制度も進んでいるようですね。特にPGAの制度は「ゴールデンリタイアメント」と呼べるほど充実しています。2015年の年金ファンドの資産残高は約300億円と、100名超しかいない年金基金としては破格の資産規模です。同じ程度の資産規模で受給者が数千人いる年金基金があることを考えると、その優位性がおわかりいただけると思います。PGAの制度は、年間の順位や予選の通過数などに応じて年金額が決定され、60歳以降に支給される仕組みです。
このようにアメリカの男子ゴルフには、選手自らのキャリアとともに、老後のリタイアメントプランも形成できる非常に優れたシステムがあります。選手のキャリアサポートや第二の人生の支援について、どのようにお考えですか。

小林米国と日本ではツアーの仕組みが全く違います。放映権収入が莫大な米国PGAならではの年金基金だと思います。そもそも日本では、男女共プロゴルフ界において放映権の権利がほとんど協会に帰属しない構造です。ですから、協会運営に精一杯で選手や会員のためにサポートはじめ効率化と利便性を図るためのシステム改修や選手強化などに投資しようにも、いまだ十分な収益構造になっていません。だから、2019年ビジョンは、スポーツビジネスの基盤構築なのです。
スポーツ団体の収益の根幹である権利関係をきちんと整理し、新しいスキーム作りが急務だと考えています。それが年金制度を作るための原資として確立でき、アメリカのPGAのようにリタイアメント後も現役時の成績に応じたインセンティブが付与されれば、選手のモチベーションも格段に上がるはずです。

山本選手は、毎年コンスタントに賞金を稼げるとは限りません。お金の管理などについて、アドバイスされることはありますか。

小林私もデビュー当初は、予定納税という制度があることも知りませんでした。新人セミナーでは、専門家を招いて税金や納税の仕方などの講義はしていますが、今はメディア対応やSNSの使い方、レセプションマナーなどプロゴルフ選手としてすぐに身に着けてほしいテーマが中心で、お金の使い方や資産運用の話までにはおよんでいません。若い選手がいきなり大金を手にするので、その必要性もあるかもしれません。現役時代のお金の管理は、ご両親や専門家に任せる選手が多いようです。

金融知識の啓発を業界として支援する

山本金融業界でも金融知識の啓発など、何らかのお手伝いができないかと常に考えています。小林会長のビジョンのなかには、資産運用や金融リテラシーの向上などのサポートも視野に入れておられるのですか。

小林選手は、成績や調子が良いとこのまま続くと思いがちです。でも、現役時代に一生分のお金を稼げる選手はごくわずかで、多くのプロは引退後もなんらかの形で働き続けています。それにプレーにどっぷり浸ってしまう現役時代に引退後の人生設計まで考える余裕はほとんどありません。小学生、中学生の義務教育の時期から金融知識を身に着ける仕組みがあれば、長い時間をかけて普段から第二の人生の準備ができるはずです。
株式に投資するにも、世の中の動きや企業の業績など流れを読む力が求められます。これはゴルフと同じで、成功と失敗を繰り返しながら養われていくものだと思います。大小に関わらず、お金を運用するのは勇気が要りますよね。子どものうちから金融の基礎知識を身に着けていれば、そのとらえ方もまた変わってくるのかなと思います。

まず「基本を知る」ことが重要

山本アメリカでの生活が長かった小林会長は、資産運用についてどのような考えをお持ちですか。

小林アメリカのLPGAツアーでは、賞金の一部が年金基金で運用され、自分で運用する資産を決めます。なので、アメリカでプレーしている頃、読書が好きなので株式投資で著名な邱永漢さんの本を好んで読んでいた時期がありました。そのなかで「資本主義は、お金がお金を連れて来る」という内容があり、お金に対する考え方が一変したことを覚えています。日本で育つと節約してお金を貯めることが中心となり、お金に働いてもらうという発想があまり育ちません。
ツアーの仲間との会話では「私は株式に投資したわ。私は債券よ」といった具合に、資産運用が日常のことであったため、投資することへの抵抗はほとんどありません。仲の良い選手から、年金の運用とは別にホテルに投資し、リターンを得ているという話を聞いたこともありました。日本とアメリカで生活していると、為替の動向にも敏感になりましたね。

山本誠一郎(やまもと・せいいちろう)

アライアンス・バーンスタイン株式会社代表取締役社長。安田信託銀行株式会社(現みずほ信託銀行株式会社)を経て、1999年サンフォード・C・バーンスタイン社(現アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー)に入社。2012年3月より現職。2014年6月グローバルのパートナーに就任。一般社団法人日本投資顧問業協会 理事。

「お金に働いてもらうことは自身で稼ぐことと同じくらい大事」(山本)

お金に強くなるノート.gif

 

役立つコンテンツ!
「お金に強くなるノート」
学校では習わなかったお金や投資のキホンが学べる3シリーズ。対談後、小林会長は「お金に強くなるノート」に目を通し、選手教育に役立てたいとかばんにしまった。 http://okane-abc.jp/

 

山本ご自身で働いて稼ぐことはもちろん大事ですが、お金に働いてもらうことも同じくらい大事なことですね。

小林いまは預金金利がほとんどつきませんよね。地道にお金を貯めることだけが資産を形成する方法ではなく、資産運用をするということを米国で学びました。それは、アメリカツアーの年金制度のおかげです。米国社会では資産運用は当たり前です。金融知識の基本が理解できれば投資を開始しやすくなりますし、少額からスタートすれば失敗も経験し、失敗から学ぶことも出来る。だから、「まず基本を知る」、やはりこれが大事ですね。その観点でセミナーなどを開催することは選手サポートの第一歩になるかもしれません。

山本我々は、選手の方々に対する金融面からのサポートにいつでもご協力させていただきます。本日はお忙しいなか、貴重なお時間をありがとうございました。

 
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